SUS316の特徴

SUS316には、以下の特徴があります。

①耐食性
SUS316は、耐食性に優れています。クロムの含有量が高く、モリブデンの添加により、塩水や化学物質に対して優れた耐性を示します。したがって、海洋環境や化学プラントなど、腐食性の高い環境での使用に適しています。

②高温耐性
SUS316は、高温においても耐性を持ちます。クロムとニッケルの含有量が高く、またモリブデンの添加により、酸化やクリープ(長期間の高温下での変形)に対して強い耐性を示します。このため、高温環境での使用や加熱装置などに適しています。

③強度と耐久性
SUS316は、一般的なステンレス鋼と同様に、優れた強度と耐久性を持ちます。これにより、構造部品や機械部品、化学プラントや石油精製などの産業分野での使用に適しています。

④溶接性
SUS316は、一般的なステンレス鋼と同様に、溶接性に優れています。ただし、適切な溶接手順と技術が必要です。正確な溶接条件を遵守することで、高品質な溶接結合を実現することができます。

⑤衛生的な特性
SUS316は、食品や医療分野などの衛生的な環境での使用に適しています。表面が滑らかで、洗浄や除菌が容易であり、腐食や汚染のリスクを最小限に抑えることができます。

また、価格については、SUS材の中でも高価な分類に入ります。SUS304と比較すると3割から5割程度光学になることが多いです。
切削性・加工性については、SUS304と比較すると難度が高く、技術やノウハウが求められます。

SUS316とSUS316L

SUS316とSUS316Lは以下の点で違いがあります。

①炭素含有量
SUS316Lは、SUS316に比べて炭素含有量が低い鋼種です。低炭素含有量により、溶接時の炭素析出(カーバイドの生成)が抑制され、耐腐食性が向上します。

②加工性
前述の通りSUS316と比較し炭素量が少なく、焼きなまし状態の高度が低いため加工性に優れます。SUS316Lは、SUS316と同様に良好な溶接性を持ちます。低炭素含有量により、熱影響ゾーンにおける炭素析出を低減し、溶接時の腐食性を抑制します。そのため、SUS316Lは溶接部品や溶接構造物に広く使用されます。

③衛生的な特性
SUS316Lは、SUS316と同様に衛生的な特性を持ちます。表面の滑らかさや洗浄性の良さにより、食品や医療分野での使用に適しています。また、低炭素含有量により、溶接部分の腐食や汚染のリスクが低減されます。

④応用範囲
SUS316Lは、一般的に食品処理、医療機器、製薬、化学プラント、海洋環境など、腐食性の高い環境や高温環境での使用に適しています。SUS316と比較してわずかに耐食性が低いものの、一般的な環境では両者の違いはわずかです。